息子が切り出してずっと片づけられなかった部屋を片づけた
捨てるつもりだった仕事の資料は全部捨てた
ついでに私の私物も少し捨てた
少し経って
「場所がないから死んだら捨てやすいように段ボールに入れている物を捨てる」
「母ちゃんは普通に生きてきたから」
と言うと
息子が
「波乱万丈な人生やろ」
と言った
そうかもしれない
他人より少し波乱万丈な人生かもしれない
でも私は
地球の長い長い歴史を考えると
私の人生なんて普通だと思う
何の足跡も残していない
縄文時代の人達と同じ
無名のただ生きた人間
そういう感覚
平々凡々な人生なんて
そんな人生を生きる人はいない
その人なりに苦しんだり悲しんだり喜んだはず
私もその人達の中に埋もれる存在
だから
何も残すつもりはなくなった
息子が必要な物だけでいい
戦争で戸籍を焼失した私の父親のように
過去がどんなものだったのか想像できない方がいい
何もない方が謎でいい
息子達に任せる
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